'."\n" ?> ゲーセンで出会った不思議な子の話 その6:長編の話

ゲーセンで出会った不思議な子の話 その6


その5

805 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 00:12:11.95 ID:WJObiXhX0

そんなこんなで、近所の俺の母校の小学校に着いた。
土曜だったので、がらんとしていた。
少年野球のチームが、練習している以外、校庭もほかに人はいない。

俺「懐かしいなあ~。ここでよく、野球したんだー」
彼女「そうなんだー。すごい広いね…」
無駄に校庭だけは広い小学校だった。

807 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 00:18:52.97 ID:WJObiXhX0

彼女は少女のごとく駈け出した。
思いっきり走りだしたもんだから、印象的だった。
あまり息上がるのもよくないのにね…。

彼女「こっちに来て!」
彼女「これ、うんていだよ、なつかしーw」

彼女は無邪気に色んな遊具で遊びはじめた。
彼女は滑り台の階段を上がって、俺が登ると滑り降りた。

彼女「無限ループだ!」
俺「そうなの?w」
こんな調子だった。

809 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 00:21:52.50 ID:WJObiXhX0

俺たちは何故か滑り台の無限ループがツボに入ってしまい、
いい年してしばらくそこで笑いながら滑り台に興じた。

俺「いつまで経っても捕まらないww」
彼女「はやく追いついてww」

こんな繰り返しだった。

818 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 00:29:48.04 ID:WJObiXhX0

しばらくすると冷静になって二人して、「え、これ何が面白かったの?」的な感じになった。

遠くから少年野球の声が聞こえる。
彼女「ねえ、あの少年野球にいたの?」
俺「うん、懐かしい。もうずっと前のことだけどね。」

彼女はしばらくぼーっと駆けまわる少年たちを見つめていた。
彼女「キャッチボールしよう。」
俺「大丈夫?無理しないでね。」

彼女はまた歌い出す。
「べーすぼーるのおとが鳴ったー、だれもぎゃらりーいないぐらうんどーってね。」
俺「何それ?」
彼女「知らないの?」

彼女は音楽の造詣も深くて、たまに俺の知らない曲も歌う。
そうするとちょっとぐずるんだけど、そういう時は決まってすぐiPodとかで教えてくれる。

822 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 00:35:54.74 ID:WJObiXhX0

その曲はフジファブリックのベースボールは終わらないだった。
「フジファブリックか…」

その日はその曲にピッタリだった。
晴れ渡っていて、広いグランドに二人だけ。
俺はその曲に則って、「あとで炭酸飲料を買いに行こう。」
というと、彼女はやたら喜んだ。

「いくよ!」
俺がボールを投げると、彼女はしっかりキャッチ。
そしてイイ感じに返してくる。運動神経がよかったのか、昔からあまり運動が得意でない俺はちょっとだけうらやましくもあり、楽しくなった。

842 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 00:49:22.42 ID:S6f45hHq0

>>1はなんて優しい文章が書けるんだろう

843 :忍法帖【Lv=2,xxxP】: 2012/01/17(火) 00:50:45.22 ID:sU6rLkOy0

本当に良スレだ…

844 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 00:52:18.09 ID:WJObiXhX0

ひとしきり小学校で遊ぶと、俺は彼女を連れて小学校の近くの駄菓子屋に行った。
正直、まだあるか不安だったけど、小学生の時はよく入り浸っていた。

彼女「すごい…こういうのって本当にあるんだね。」
俺「ま、田舎だからね…w」

駄菓子屋のおばちゃんには可愛がってもらった。
おばちゃん「はい、いらっしゃい。」
俺「こんにちは、富澤ですー」
おばちゃん「あら、富澤くん…久しぶりだねえ…」

彼女も笑って、
「こんにちは」と言った。
3人でしばらく談笑した。

846 :忍法帖【Lv=23,xxxPT】: 2012/01/17(火) 00:55:01.93 ID:ZmFvwrP20

青春そのものじゃないか

849 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 00:58:08.94 ID:WJObiXhX0

おばちゃんは、
「この前〇〇君来てさ…とか、〇〇先生がね…」
と懐かしい話をたくさんしてくるため、俺は楽しかった。

店を出る。
彼女は退屈だったかな、って思うと彼女は買った駄菓子を抱えながら
彼女「すごいね…すごいね。あったかい。こういうの本当にあるんだ。」
とすごく喜んでいた。

彼女「富沢のこともっと知れた気がして嬉しいんだー
   これが田舎かーふるさとかー」
彼女は高揚して何度も言っていた。

俺がいつも飲んでいたって教えてあげたチェリオを嬉しそうに飲んでいた。

857 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 01:06:29.44 ID:WJObiXhX0

そのあとは、彼女を連れて歩いて、疲れたら休んで、の繰り返しで
そこら一帯、俺にゆかりのある場所をめぐった。

路端の小川を指して、「中学の時この場所によく自転車をつっこんで走って、水上自転車大会って言って遊んだんだよ。」とか、「このお宮にいつも初詣にきたんだ」とか、「中学の通学路はここで、片想いの子が彼氏と歩いてるの見てショック受けたんだー」とか。

それは、まったく中身のないしょーもないツアーだった。
でも彼女は、「わーすげー!」「こんな感じ?」
とか一つ一つ本当に生き生きとリアクションをとった。

小学校からさほど遠くない母校の中学校まで来て、彼女は突拍子も無いことを言い出す。

860 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 01:11:18.56 ID:WJObiXhX0

彼女「毎日、ここの中学校に通ってたんだね…」
俺「そうなるね。いやーなつかしいww」

彼女は正門からの道を指した。
彼女「で、ここを帰ったと…」
俺「うん、そうだね。」

彼女「わたしたち今から中学生ね、同級生の。ひゃーどうしよう。」
俺「ええー!?」
その日は時間が経つのも早く、時分はそろそろ夕方にさしかかろうとしている頃だった。

870 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 01:16:23.67 ID:t/bOhu8z0

そういえばゲーセンに会う以前の彼女の事は語ってなかったな

>>870
のちのちふれますね。

871 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 01:16:32.04 ID:WJObiXhX0

彼女「あ、富澤くんだ…!ねえねえ、良かったら一緒に帰ろ?」
俺「そのノリ続けんのー?」

急にこっ恥ずかしくなった。
彼女はこうなるとひかない。

俺「吹石じゃん…ま、いいよ。帰ろうか?」
彼女「やったー!」

彼女が手を差し出して手をつなぐ。
それまで幾度と手を繋いだことはあったけど、この時ばかりはなんていうかすごく恥ずかしかった。
ちなみに、自転車は小学校に置いてあった。

873 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 01:19:28.91 ID:OETuPCP70

心が揺さぶられすぎて
鳥肌たってる。

876 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 01:23:49.01 ID:WJObiXhX0

普段爛漫な彼女が、この時は中学生になっていたのか、急に無口になりだすもんだから俺は焦った。

空も夕焼けに近づいて、俺は手に変な汗をかきそうだった。
俺たちには珍しく、話す言葉が浮かばなかった。

よく分からないけど、なんだかすごく初々しい気持ちになっていた。
彼女がそういう風にしていたからなのか、なんかいつもの調子とは違っていた。

どうせ自転車取りに行かなきゃ行けないから絶対行くのに、彼女は意味ありげに「ねえ、ちょっと小学校寄り道してこっか。」と言った。

878 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 01:31:26.04 ID:WJObiXhX0

小学校につくと、彼女は疲れちゃったのか、校舎と校庭をつなぐ階段に腰掛けて「ふう」と息を大きくはいた。

おれは気になって、「待ってて」と言ってすぐに自販で飲み物を買ってきて彼女に手渡した。

彼女「ごめんね、いつもいつも迷惑かけちゃって…」
俺「何言ってんのさーwおいしそうに飲んで笑顔を見せてくれたらいいんだよw」
そう言うと、彼女はにっこり笑って、立ち上がった。

校舎の脇の犬走りにあったじょうろを持ちだして、水をくみ始めた。

俺「?何すんのー?」

889 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 01:39:21.40 ID:WJObiXhX0

彼女は、もう誰もいなくなった校庭に、じょうろで何やら描き始めた。
何をしているんだろう?

「ありがとう」

そこにはこんな文字が浮かび上がった。
俺はハッとした。
急いで彼女のもとに駆け寄った。

そうすると彼女の方から抱きついてきた。
彼女は泣いていた。

彼女「ずっと…これからもずっとずっと…一緒にいてくれますか?」
彼女の言葉が脳内をこだました。

896 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 01:42:15.96 ID:fo1rgzew0

うわぁ・・・これはくる・・・
まじ泣きそう

900 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 01:44:36.71 ID:WJObiXhX0

俺「ずーっと一緒にいるよ。ずっとね。」
俺は深く抱きしめた。 彼女が泣き止むまで、頭を撫でながら。
彼女は泣きながらも「うぇ…わんわん…」とおどけて見せた。

俺は、心が傷んだ。
俺はこの子にこれから何をしてやれるんだろう?
一緒にいて、共に歩く、それしかないと分かりながら。

彼女は半泣きのまま、背負っていた小さなリュックから、何やら取り出そうとした。

15 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 01:51:14.36 ID:ZidIUfAgi

彼女の一緒にって言葉で涙が止まらなくなったぁ~

24 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 01:58:25.96 ID:WJObiXhX0

彼女は、リュックから色紙をとりだした。

そこには、俺があげたCOACHのデザインの
ネックレスをして笑っている女の子が描かれていた。
そしてわきに、「富澤へ。いつもいつもありがとう。」という文字と日付が書かれていた。

彼女「それね、私が考えたオリジナルキャラなんだ。
ネックレス、すごい嬉しかったから。お礼にね、描いたの。ありがとう。」

そういって涙目で笑って俺に色紙を渡した。
朝、机で何かしていたのはそういうことだったのか。

俺は、本当に嬉しかった。
今までもらった中で、これほど嬉しいものはないと言っても過言ではないくらいだった。

33 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 02:12:45.54 ID:WJObiXhX0

俺は、涙をこらえて、「ありがとう」と言った。
渾身の、心からのありがとうだった。
その絵は暖かくて、彼女自身のようにも思えた。

彼女の頭を撫でると、彼女は楽しそうに「わんわん!」と言った。
なんだかそれがとってもおかしくて、さっきまで泣いていたのに二人して大笑いした。

もう楽しくなって、叫びながら校庭を二人で走りまわった。

36 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 02:21:01.92 ID:WJObiXhX0

もう辺りもすっかり夕焼けになっていて、徐々に暗くなりだしていた。

帰り道は上り坂だったので、俺が自転車をひいて、二人で歩いて帰った。
一番星が見え出していた。
彼女は「一番星!」と言うと、また歌い出した。

「さようならーあえなくなーるけどーさみしくなーんかーないよー!」
帰り道は、二人で大合唱だった。
夕闇、宵の口はテンションが高揚する。

「ほーしーになれたらいいなー!」
歌い合うと、あまりのひどさに二人で爆笑した。

38 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 02:22:38.45 ID:aTQCt7I2O

彼女さんみたいにユーモアな人中々いないよな‥

54 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 02:40:24.18 ID:WJObiXhX0

彼女の魅力と言ったら、俺の知らないことをいっぱい知ってて、俺にできないことがいっぱいできて、一緒にいるとどんなものを見せてくれるか分からない、そういうところにあった。

この帰り道でも俺の前で急にタップダンスを披露して「こういうステップがあってねー」と突然言い出したり、空のグラデーションを見ては、こういう色合いの空を油絵で表現するときはまずどんな色をおいてー、と色々嬉しそうに語ってくれた。

そのすべてを面白く感じさせてしまうのも、本当に彼女だからこそだった。

56 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 02:54:43.70 ID:WJObiXhX0

いつも早くのぼりきりたい坂道が、彼女といると永遠に続けとさえ思った。
振り返ると、空はとっぷり暮れていて、月があった。
彼女は「三日月さんが逆さになってしまった!」と叫んだ。

俺「今日も、楽しかったねー」
彼女「うん、昨日もだけど、すっごいすっごい楽しいよ。」

そういって道を進んで行って、とうとう我が家に着く。
これで、今日も終わってしまう。
楽しい時間なんて、すぐに終わってしまう。

57 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 02:58:08.95 ID:T3aYag/70

最高に幸せすぎて怖いな

もっと笑って毎日を大事に生きようと思う

76 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 03:32:00.02 ID:Br5yBSCp0

彼女が歌ってた曲が最強過ぎるので少し歌詞あげ。

10-FEET ライオン
一体何の為の嘘なんだ! もう僕は何処にも居ないんだ
何の為に生きているんだろう?叫んだ。
心の形が変わっても 全てを犠牲にしてもいい
そこに愛とあなたが在るなら叫んで 叫んで… 。

77 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 03:32:18.67 ID:Br5yBSCp0

藍坊主 テールランプ
神様一つ聞いてくれよ 風切る足を僕にくれよ
星降る丘に行きたい あの娘に一度星見せてあげたい
突き出す前足をくれよ 蹴り出す後ろ足をくれよ
あの娘を笑顔にしたい 灰色の夜を駆け抜けてさ

122 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 12:05:12.18 ID:wNLcWNR10

吹石ちゃんを俺なりに描いた

123 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 12:07:23.00 ID:bBlGJvKDi

>>122
ヤベwうめぇw

166 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 18:01:45.64 ID:WJObiXhX0

彼女が歌っていた歌の歌詞を書いてくれた人ありがとう。
なんだか嬉しくなりました。

なんだか凄いことになってきましたね…
ゆっくりで申し訳ないけど、続きを書いていきます。

168 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 18:02:55.00 ID:hjwKO1p70

>>166
ゆっくりでいいよ!