'."\n" ?> ゲーセンで出会った不思議な子の話 その8:長編の話

ゲーセンで出会った不思議な子の話 その8


その7

305 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 22:30:08.67 ID:WJObiXhX0

彼女「わたしね、ゲーセンがあったから楽しい高校に行って過ごすことができたし、夢を持つことが出来て、美大に進学したんだよ。大袈裟かな?w」

俺「そんなことないよ。すごいと思う。ゲーセンっていいとこだしねぇ。」

彼女「富澤もいたしなあw」
彼女は凄く照れくさそうに、ぽろっとそんなことをこぼした。

310 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 22:37:22.85 ID:WJObiXhX0

彼女は夢を語りだした。

彼女「ゲーセン減らないでほしい。どんどん減ってる。わたし、いろんな人が楽しめるアーケードゲームを作るのが夢だった。」

それを語る彼女は、いつにも増して真剣そのものだった。
凛とした視線で、かっこいいとさえ思った。

彼女「ゲーセンでしか味わえないドキドキがあるんだよ。富澤はどんな時にそう思う?」「わたしはね」

彼女はまっすぐだった。まっすぐすぎて、胸が痛くなるくらいだった。
普段アホなことをけっこう言うくせに、まっすぐで、ひたむきで…
夢を語る彼女に憧れた。

314 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 22:44:27.09 ID:WJObiXhX0

俺は最初こそ笑って聞いていたが、
だんだんくったく無く夢を語る彼女を見ているのが辛くなった。

夢があって、それを追いかけてるってだけで人は眩しく見える。
でも、彼女が置かれている状況を思い出すと、俺はもうダメだった。

俺は夢を語る彼女の前で泣いてしまった。
「すごい…すごいよ…」と言ってボロボロ泣いてしまった。
彼女の前で、泣いてしまった。

彼女「ありゃりゃ、わたしそんな泣くほど感動するほど凄いこと言ったか…?」
と彼女は動揺した。

俺「絶対叶えようね、その夢…」って言いながら俺は泣いてた。
そうすると彼女もぼろぼろ泣き出して、二人してわんわん泣いてしまった。

320 :名も無き被検体774号+: 2012/01/17(火) 22:49:05.54 ID:DJrGJDj00

やべ泣けてきた・・・

338 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 23:05:36.01 ID:WJObiXhX0

泣きながら抱き合った。
この時ばかりは俺も運命という言葉を信じた。
あの日、たまたまゲーセンに行って、偶然彼女を見つけて、柄にも無く自分から話しかけた。
あの日、まっすぐ家に帰っていたらどうなっていた?

俺はこの時彼女を一生守ろうと心に決めた。
これからどんなことが待っていようと、決心した。
それと同時に俺の中で、彼女にしてあげたいことが一つ増えた。

344 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 23:12:03.29 ID:WJObiXhX0

俺はその日は彼女が切望するので、彼女宅に泊まることにした。

彼女のお父さんと一杯やった。
彼女がビールをついでくれて、なんだか新婚にでもなった気分だった。

そのあと、なんとなく居間のソファで寝ることにした。
彼女といられる日常の時間が、少しでも多く続いて欲しかった。

354 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 23:30:40.89 ID:WJObiXhX0

その次の日も、結局俺は彼女宅にいることになったんだけど、彼女はお父さんとお母さんと買い物に行くようで、ついていったけど俺はなるべく家族水入らずを邪魔しないように徹していた。

荷物持ちとかしつつ、会話を聞く役目に徹していた。
俺はもう、十分彼女との日常を満喫した。
お父さんとお母さんだって、娘と過ごしたいに決まってる。

俺は流石に、空気を読んで最終日までいるのは避けた。
4日目の夜に、家に帰ることにした。
彼女とお母さんが作ってくれた晩御飯を食べて、俺は彼女宅を出ることにした。

361 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 23:38:19.80 ID:WJObiXhX0

彼女は、5日目の夜に病院に帰るという。
俺は、その次の朝に会いに行く約束をした。

俺「じゃあ、家族団らんを楽しんでね。」
彼女「もっといてもいいのに。」
俺「いや、明日で最後だし、お父さんとお母さんも俺がいたら色々やりづらいこともあるでしょ。」
彼女「次に会うのは、また病室だね。」
俺は黙った。
彼女「絶対、会いに来てね。待ってるから。」

369 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 23:47:25.65 ID:WJObiXhX0

彼女とずっと一緒にいて、離れると、とんでもないほどの虚無感に襲われた。
あれ、俺の日常って、こんなに何もなかったか?
と思うほどに電車の中でも、家に帰ってからも無気力になり、何もかも手につかなくなった。

無理もなかった。今まで不可能だった、彼女と普通の日常を送る、ということが俺にとって楽しすぎて、本当に心地良かったからだ。

色々思い描いた。彼女が完治して、もう一度普通の生活をして、一生、平凡に暮らしていくのを想像した。

373 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 23:54:04.19 ID:WJObiXhX0

彼女が病院に戻った朝、俺は一目散に駆けつけた。
早く、会いたかった。
俺は花を持っていった。
彼女の好きなトルコキキョウ。

病院にもどってすぐ花ってのもどうかと思ったが、少しでも彼女の気が紛れるなら、と思った。
病室に着くと、彼女に「ようこそ」と言われた。

彼女「なんでだろう、やっぱり変に落ち着くねw」
また、籠の中に戻されてしまったような気しか、俺にはしなかった。

378 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/17(火) 23:59:06.36 ID:WJObiXhX0

それからの日々は割と穏やかに進んでいったと思う。
でも、俺は残された時間が迫ってきているのを感じていた。
病室で彼女に会えない時間が、苦しくて仕方なくなってた。

頻繁に病院に泊まるようになった。
いつのまにか、大学はまったく行かなくなっていた。

379 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 00:00:02.19 ID:PzbDXNom0

もうだめだ・・・・・・・・・・・
もう・・・・画面がみえねぇ

386 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 00:06:39.84 ID:VEa4UjXG0

彼女が病院にもどってからしばらくすると、俺の誕生日が近づいていた。
そして、その約一ヶ月後に、彼女の誕生日だった。

俺は自分の誕生日の日にも、いつもと変わらず病室に向かった。
彼女にはちょろっと教えていたが、前日にも何も言われなかったし、きっと忘れているだろうな、と思ってた。

病室に着くと、彼女がニヤニヤしていた。
その日はいつもよりだいぶ元気そうで、俺は驚いた。

392 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 00:18:30.58 ID:VEa4UjXG0

彼女のお母さんが冷蔵庫からケーキの箱を取り出して、
小さなショートケーキを3つ取り出す。彼女は「おめでとう!」と言った。

俺が「ありがとうー」とビックリして言うと彼女はそのまま歌い出した。

「きょうはとくべつなよるさー!すてきなーゆめをみれたらなー!」
それはフジファブリックのbirthdayだった。
歌ってこちらを見て笑った。
ありがとう、と言って頭を撫でると、彼女は「わんわん」と小さく言った。
お母さんがいるから恥ずかしかったのだろうか。

395 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 00:24:53.92 ID:9c4eEsQt0

すごいドキドキしてきた

404 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 00:37:36.43 ID:VEa4UjXG0

俺は、彼女と会ってから少しでも彼女の片鱗を感じたくて、彼女が良いと言った音楽や本は、家にいる時に狂ったようにチェックしていたから、その曲もフジのそれだと、すぐ気付いた。

彼女「プレゼントがあるのです」
そう言って彼女は俺にマフラーを渡した。
彼女「それ、わたしの使ってたマフラーなんだ。これから寒くなるでしょ?ここに来てもらうのに、風邪ひいたりとか心配だし…」
俺「うわーありがとう!」

彼女「あとね…」
お母さんが何やら包みから取り出す。それは格ゲーのアケコンだった。
彼女「これでもっと練習してねw」
俺は思わず吹き出してしまった。

406 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 00:42:51.04 ID:VEa4UjXG0

素敵な誕生日だった。
病院にいながら、病気と闘いながら、どれだけ俺のことを思ってくれていたんだろう。
彼女の笑顔を見ながら、俺は決心した。

その日の後、俺は彼女が元気な日にそっけなく聞いた。
「やっぱり、ウェディングドレスとかって、女の子は憧れるの?」
彼女「それは憧れるよー!真っ白だしね。なんで?着せてくれるの?w」
俺「いや…wなんとなく聞いただけ」

407 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 00:47:03.28 ID:GiMQqHjD0

>>406
着せてあげて欲しい!!

409 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 00:48:20.01 ID:VEa4UjXG0

彼女の誕生日まで、あと少しだった。
俺は、すぐさま実家に帰って妹に相談した。

ウェディングドレスのような衣装が作りたい、と妹に相談した。
妹は不審そうにしていた。
けど、ワケを話せることもなく、大学のサークルで必要なんだとかそれっぽい理由をつけて、どうにかこうにか生地選びや作り方まで、一から聞いた。

何かできるなら、もう今しかない、そう思って必死になっていた。
悠長なことは言っていられなかった。本当に必死だった。

411 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 00:50:56.63 ID:wBa3Kpcn0

間に合ってくれ

415 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 00:57:31.96 ID:VEa4UjXG0

結果、不器用な俺には歯が立たず、かなり妹の力を借りて、
純白なドレスを作ったのだった。

それでも俺は妹と一緒に生地を買いに行ったり、生地を切ったり、一緒にどういうデザインにしたいか草案を考えた。
二週間くらい、作るのに時間がかかってしまった。
俺はその間も、実家と彼女の病院を行き来したりしていた。

その出来は、決していいものではなかった。でも、白いドレスの形にはなっていた。
ウェディングドレスと言えば、そう見えないこともない。
手伝ってくれた妹には、本当に頭があがらない。

俺はこれを着た彼女の姿を想像して、ついつい口がにやけてしまった。

418 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 01:06:22.50 ID:VEa4UjXG0

ドレスが出来上がったのは、彼女の誕生日の二日前の事だった。
ドレス作りは間に合った。
完成したときは嬉しくて本当に泣きそうになった。

俺は、それを宅配便で送るつもりでいたが、もう時間も迫っていたので
大きな紙袋にいれて、自力で、向こうの自分の家まで持っていくことにした。
このときは本当に寝不足続きで、目薬とフリスクが手放せなかった。

420 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 01:10:37.72 ID:VEa4UjXG0

彼女の誕生日の日がやってきた。
まず、彼女の調子がよければいいが。行っても寝ている時が増えていたのだ。

そして俺は重大なことに気づく。
「俺、自分のタキシードとかねえじゃん…」
俺は仕方なく、スーツで行くことにした。ちょっと洒落たネクタイをすればいいだろう。

俺は、紙袋にドレスと想いを込めて、家を飛び出した。
そして、この日は俺にとって忘れられない日となる。

422 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 01:11:29.83 ID:7Rw3FX/J0

なんか胸騒ぎが・・・こわい・・・

427 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 01:12:51.81 ID:Bdk2QYN20

ヤダよ…胸が痛いよ

430 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 01:13:51.57 ID:MnJM/s69O

良い意味であって欲しい……

436 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 01:15:59.80 ID:VEa4UjXG0

俺は途中でいい感じの花束を買っていった。
ブーケのつもりだった。
気分は新郎。楽しい気分で一杯だった。

病室に着く。彼女は、起きていた!
俺は心のなかで「やった」と思うと、彼女に向かって「誕生日おめでとう!!」と言って花束を渡した。

彼女は一度「わっ」と言うと笑顔で「嬉しいー!ありがとう~!」と言った。

440 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 01:17:48.23 ID:5sfMeCjB0

ひとまず、良かった!

449 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 01:21:20.94 ID:VEa4UjXG0

笑顔が返ってくるのが嬉しくて、嬉しくて、もう仕方なかった。

彼女「スーツなんて気合い入ってるねーw」
俺「ちっちっちっ。今日はこれだけじゃないんですよ」
正直緊張で胸がやばかった。

俺は紙袋から、想いを詰めたドレスを取り出す。
「じゃーん!」
彼女「え!え!何これ!!ウェディングドレス!?」

彼女は途端に興奮して目をキラキラと輝かせた。