'."\n" ?> ゲーセンで出会った不思議な子の話 ラスト:長編の話

ゲーセンで出会った不思議な子の話 ラスト


その8

465 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 01:28:05.88 ID:VEa4UjXG0

彼女「え、え、え、どうしたのこれ!?」
俺「俺が作ったんだーw」
俺は照れながら、誇らしげに答えた。

俺「着てみる?」
彼女「うんうん、着る着る!!」

少し、大変だった。お母さんとか看護婦さんを呼んで、どうにか彼女が着替えられる体勢にした。

その後、
彼女「着替えるから待っててね。」
といわれてカーテンが閉じられた。
新婦のお色直しを待つ、新郎のような気分だった。

476 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 01:37:41.97 ID:VEa4UjXG0

彼女「できたよー!」

カーテンが開いたその向こうには、
俺の作ったちょっぴり不格好な純白のドレスを着て、はにかむ彼女がいた。

「似合ってるでしょー?」
と彼女は笑いながら俺に尋ねた。

俺は、この日見たこの光景を一生忘れることはない。
彼女は、ただただ、綺麗だった。
嫌なことも辛いことも、何もかもがふっとんだ。

477 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 01:38:08.16 ID:fmBwI2Gs0

最後に近づくいてくるほど
結末を聞くのが怖い。

490 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 01:49:53.79 ID:VEa4UjXG0

俺は彼女の手をとった。
そうすると、彼女は歌い出した。
「ばたふらいーきょうはーいままーでーの」
「どんなーときよーりすばらしいー!」

木村カエラのbutterflyだった。その歌は、彼女が歌い出すと近くにいた看護婦さんまで歌い出した。
4人部屋だったんだけど、病室の人たちは笑って手拍子をしていた。

俺は彼女に向かって言った。
俺「一生そばにいるね。」
彼女は「わたしも。」と小さく頷いた。

495 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 01:55:20.94 ID:VEa4UjXG0

そういう流れだったのか、恥ずかしくて仕方なかったけど、俺たちはお母さんやら患者さん、看護婦さんたちの前で小さくキスをした。唇が触れ合うくらいの、優しいものだった。
そして何より、これが彼女との初めてのキスだった。

自然と拍手みたいのが起きてしまって、とても恥ずかしかった。
俺たちはお互いに見あって、笑いあった。
キスしたらそれがおかしくて、ふたりで笑いが止まらなかった。

530 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 02:05:49.99 ID:uNLlqxAdi

オレ達だけではなくて、普通に皆に見て欲しいのが本音。

537 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:09:18.32 ID:VEa4UjXG0

その日は幸せのど真ん中にいた。
しばらく、スーツとドレスのままで二人で話した。
不思議な気分で、一生このままならいいのに、と願わずにいられなかった。

彼女はすごく喜んでくれた。
「ありがとう、すごく幸せ」と言ってつけている俺のあげたネックレスを握っていた。
「こんな日にはAnthemが似合う」と一人でフジファブリックのそれを口ずさんでいた。

しばらくするとお母さんが来て、「写真撮るね。」と言って写真を撮った。
「何も言わなくても、幸せそうな顔してるねw」
そう言われたのが印象的だった。

540 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:16:15.01 ID:VEa4UjXG0

俺にとって、彼女といられる日はいつも特別だったけど、この日はそれ以上に特別だった。

楽しくて、時が止まれと思った。

この日が過ぎたあとも、しばらくは穏やかな日が続いた。
俺たちはいつも病室で一緒にいたけど、いてもいても足りないくらいだった。

普通だったら毎日毎日顔合わせてたら少しは退屈になったりするんだろうけど、俺たちはどんなに話しても笑いが絶えなかった。
どうしてだろう、話しても話しても、もっと一緒にいたい、そういう想いが募るだけだった。

541 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 02:16:33.77 ID:PQVzt6CC0

見ているぞ!!!
奇跡よ起こってくれ!!!

549 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:27:34.77 ID:VEa4UjXG0

彼女は病室でぼそっと100sのセブンス・ワンダーを歌って見せたことがあった。
彼女「この病院には七不思議があるんだよ。」
俺「へえ~何それ?」

それは彼女が勝手に考えたヘンテコなものだった。
実に下らない内容で、俺は一緒になって笑った。

俺「7つ目は?」
彼女「わたしが入院してることかなー」

俺はそれを言われて言葉を失った。

彼女「はやく、元気になりたいなー」
それが彼女が珍しく弱音を吐いた瞬間だった。
俺「すぐによくなるよ、必ずね。」

俺だって、すごく不安だったけど、信じるしかなかった。

553 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:32:38.96 ID:VEa4UjXG0

12月になって、クリスマスが近くなったあたりから、彼女の様子は徐々に変わり始める。
現実が、音を立てて彼女と俺に牙をむき始めた。

彼女は辛そうにしていることが増え、行っても一日話せないことが増えた。
クリスマスイブもクリスマスも行った。
クリスマスは、まだなんとか調子がよくて、少しは話すことができた。

正念場だった。俺はストレス性の胃炎に何回かなった。

556 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 02:34:07.57 ID:3YzCxcUB0

あうう、神様・・・・・・・・・

559 :忍法帖【Lv=24,xxxPT】: 2012/01/18(水) 02:35:29.75 ID:W5VM0uND0

こういう、辛いことや悲しいことが起こる時に命って光り輝くんだなぁ、、、

560 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:35:59.08 ID:VEa4UjXG0

年が明けた。
これほど世間の「あけおめ」ムードが恨めしかったことはない。
浮かれている人々が、すごく憎たらしく感じた。

この頃から、俺は彼女の両親とも連絡をより密にとるようにした。
そろそろ、いつ何が起こるか分からない状態、にまで来ていた。

そう、いざそういう状態になってからは、状況はみるみるうちに進展していった。
昨日までの状態が、次の日になれば嘘みたいになっていることも、ありうる。

563 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 02:37:34.09 ID:wBa3Kpcn0

すごく胸が痛い・・・・・・

568 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:40:33.18 ID:VEa4UjXG0

俺はこの頃から、彼女との話せる時間を本当に、本当に、大切にした。
弱った彼女を見るのは辛かった。けど、優しく、笑顔で、話しかけた。

俺は今までも、楽しかった日のことは決して忘れないように日記にしたためていたが、この頃から彼女の写真や映像もより積極的に撮るようにしていた。

571 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:45:24.83 ID:VEa4UjXG0

刻一刻と、命の火が燃えていく気がした。
俺は、今、自分が何をしているのか分からなくて、どうしようもなく辛くなるときもあったが、病室に行って彼女の顔を見てどうにか耐えていた。
彼女の両親との協力は、不可欠だった。

しばらくすると、彼女はとうとう個室に移った。

575 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:53:12.71 ID:VEa4UjXG0

病室に座る。
俺と、彼女だけ。

俺は優しく語りかける。
「今日は寒いね。」
「最近スパ4強くなったんだ俺ー」
「今度画材屋行こうと思うんだけど、何か欲しい?」
「俺はね、水彩色鉛筆がしたくて…」

返事が返ってこない日のほうが多かった。
たまに、すごくゆっくりだけど、答えてきたり、自分から話そうとすることもあった。

579 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 02:57:47.25 ID:VEa4UjXG0

彼女の両親と、俺で、彼女を見守る。

彼女は俺に言った。
彼女「富澤…いるの…?」
俺「いるよ!俺はここにいるよ!」

彼女は少し笑みをこぼしてみせた。

彼女「あのね…。少しだけね…言いたいの…。」
俺「ゆっくりでいいんだよ、俺は、ずっと、ずっと、そばにいるんだから。」

彼女「いつもね…一緒に…いてくれた…人…」
俺「うん、うん。」
俺は半泣きだった。
彼女の両親も、泣き出していた。

580 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 02:58:45.57 ID:PyqpFDjX0

涙が溢れてきた

599 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 03:11:38.26 ID:VEa4UjXG0

彼女「富澤は…わたしの…大切な人…」
俺「うん、俺も、吹石が大切だよ…」

彼女「わたしが…いなくなっても…富澤はきっと…しあわせに…なってね…」
俺「違うんだよ!!吹石も一緒に幸せになるんだよ、ずっと一緒なんだから!」

彼女は少し笑みを含んで、
彼女「こんなわたしを…大切に想ってくれて…ありがとう…ありがと…」
俺「うん、うん。」

彼女「わたしは…だいじょうぶ…たのしかった…」

彼女はゆっくりだけど、確かに、俺にそう伝えると、そのあとお母さんやお父さんに懸命に、話していた。
俺は、泣きすぎた。
その日だけで一年分くらいの量の涙を流したかもしれない。

602 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:12:54.18 ID:9c4eEsQt0

切ない・・・

618 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 03:18:01.04 ID:VEa4UjXG0

それから二日後、彼女は俺と両親に見守られながらこの世を去った。
享年24歳。

最後は安らかに、眠りに落ちるようだった。

俺はしばらく式やその他の彼女に関わることの整理で、忙しくなり、気が張った。
目の前で進行していく数々の出来事が、俺の脳をただただ通過していくだけだった。

633 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:20:13.97 ID:MnJM/s69O

>>618
嘘だと言ってくれ……

624 :角笛吹き ◆D3wTy8Z7ck: 2012/01/18(水) 03:19:12.47 ID:O7bS0mc20

あぁ…

630 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:19:44.83 ID:ceLIC91u0

予想してたがその結末は聞きたくなかった

653 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 03:25:36.02 ID:VEa4UjXG0

彼女がいなくなったこと、続けざまに起こる法要、俺は、ただ呆然としていた。
心にぽっかり、穴が開いた。

彼女のお墓の前に言った時、俺があまりに号泣しすぎて周りにも奇異な眼差しで見られた。

661 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:27:39.03 ID:Wkz7ugNU0

でも彼女は1に出逢えてよかったよ
一生分のしあわせをありがとう

673 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 03:32:24.58 ID:VEa4UjXG0

気づいていた人は大勢いると思うけど、俺と彼女は最初から最後まで「好き」という言葉を互いに口にすることがなかった。

なぜなのか俺にも未だに不思議なんだけど、 そんなこと口にしなくてもお互いが大切に想ってるって分かってたし、一緒にいて共に過ごしてること自体がそういうことなんだから、口にしなかったんだと思う。
言おうと思ったこともなかった。

誰かが磁石が惹きあうみたいって言ってくれたけど、それがすごくしっくりきた。

676 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:35:13.86 ID:wBa3Kpcn0

「好き」って言葉以上の、もっと形容しがたい何かが二人にはあったんだろうな

677 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:36:04.00 ID:ItVhZz9y0

上手く言えないけど、俺はこの話に出逢えてほんとによかったと思う。

712 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 03:48:19.07 ID:VEa4UjXG0

みなさん、ここまで付き合ってくれて、本当にありがとう。

ここまで書くのは、正直本当に辛かったけど、みんなの支えがあったおかげで、途中で折れずに最後まで書けました。
書きながら泣いてることも実はけっこうありましたw

今は乗り越えたとは言えませんが、整理はつきました。
最後に、花言葉でしめた方がいいのでしょうか?

718 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:49:22.94 ID:UcvTtKg+0

>>712
花言葉たのむ1から聞きたくてしらべてないんだ

734 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 03:55:01.82 ID:VEa4UjXG0

複数あるようですが、
彼女が大好きだったトルコキキョウの花言葉は、

「永遠の愛」です。

彼女のことはこれからも、ずっと想い続けます。

750 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:58:00.49 ID:ob0W8tQ/0

>>734
調べず待っててよかった!!
1から聞けて本当に…

755 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:59:02.12 ID:UcvTtKg+0

>>734
いい花言葉だな・・・1と彼女にぴったりだよ

739 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:56:07.03 ID:9tfWldQ60

>>1乙!!そして本当に本当にありがとう!!

757 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 03:59:55.58 ID:0jioi2tK0

お疲れ様です。

書くの辛かったと思うけど本当にありがとうございました。

779 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 04:04:12.25 ID:obXvQdZQ0

>>1お疲れ様、そしてありがとう。
俺、明日から頑張るよ

791 :1 ◆WiJOfOqXmc: 2012/01/18(水) 04:08:47.24 ID:VEa4UjXG0

みんなここまでありがとう。
本当に、ありがとう。

彼女が亡くなった直後は一ヶ月近くまともにメシ食べれませんでした。
でも今は割と穏やかに、普通に過ごしています。

ゲーセンにも行っているよ。
やっぱり、あそこは楽しい。
みんなも、もっとゲーセンに行ってゲーセンを盛り上げてくれるといいな。

それでは、本当にありがとう。
またいつか、今度はゲーセンとかで会えたらいいね。

793 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 04:09:04.66 ID:jlubkleX0

1さん感動をありがとう!

813 :名も無き被検体774号+: 2012/01/18(水) 04:15:33.61 ID:ceLIC91u0

1と彼女と通じて得たもので、1が幸せになるそんな人生を歩んでほしいね
そしてこのスレを見た人間が何かを得て幸せになる事が彼女のためだと思う
俺も得るものがたくさんあったよ、二人ともありがとう みんな幸せになろうぜ

824 :忍法帖【Lv=3,xxxP】:2012/01/18(水) 04:22:03.78 ID:Dzhee7sui

>>1乙
本当に感動した。
いま自分のいる環境をもっと大事に思うことにするよ。